経営者保証の制限

金融庁によれば今後金融機関は企業向け融資の経営者個人保証を求める場合はその具体的な理由を説明する義務を負うとのこと。実質的な個人保証の制限となります。

住友銀行から社会人をスタートし、イギリスの投資銀行でも日本金融セクターの責任者を務めていた当職から見る限り、日本の銀行は本来の銀行機能である企業審査能力が不足、というより無に近いものがあります。不動産担保で貸してきたので審査能力の積み上げが無いのです。

ちなみに投資銀行時代の私は、りそなホールディングスのカード事業の再編を立案してクレディセゾン資本を入れた4社合併の新生りそなカードを設立したり、JCBカードの株主構成変更を考案、実行したり、大手銀行の保険代理店業務に関する助言など、複数のディールを一人で考案、チームを率いて実行した経験があります。大手銀行の経営陣相手に若造ながら偉そうな事を言いつつも、なぜかディールが獲得できておりました。

グローバルウォーターを起業するにあたり当職も融資を得るため金融機関を回りました。電話で断られた事も一度ではありません。東京相和銀行では「新規口座開設ですね、承知しました」と何分か待たされたと思ったら「当方に口座をお持ちでないとお取引はできません」と来た。口座を作りたいのだから口座が無いに決まっているだろうと言いかけたが、新規顧客は不要という殿様商売で成り立っていたという、今から思えばあの頃が恋しく思える程、裏を返せばその後の世の中は悪化したのでしょう。

ちなみに同行については当職投資銀行時代に本部ロンドン同僚バンカーや東京支店会長と一緒に同行頭取と面談した際の「Sword」に関する面白いエピソードがありますが、また後日にでも。

当職の古巣の住友銀行では口座は作れたものの、融資はできない。しかし日本には充実した制度融資があり、私も利用させてもらいました。東京都の信用保証協会による保証という建付けでしたので、だいぶ前の話、上野の保証協会に自転車で訪問し担当者の方と話をしました。投資銀行経験から好奇心で「なぜ日本では個人保証が必要なのですか?」と訊ねたところ、「あんた、自分で保証もできないのか?」とそのおじさんに叱られてしまいました。

それから約20年。ようやく本来の審査のスタート地点に立てる日本の銀行。これ以上悲しむのは不可能かもしれず、素直に喜びます。

クレームからも見えるデフレ

マグネシウム豊富な早池峰霊水のメーカー、佐々長醸造。

その佐々長さんの醤油がアイドル?によりテレビで紹介され、そのファンと思われる多数の新規顧客から通常なら製造対応に年単位かかる規模の大量注文が一晩で入り、当店の楽天支店やヤフー支店もたまたまそれら醤油つゆも取り扱っていたため、一晩で前代未聞の大量注文が入っており驚愕、8月24日から今日まで佐々長さんと相談しながら休む暇なく対応していますが、瓶メーカーで追加製造が難航し、かなりの長期化となっております。

事前に大量準備しておけばよいのに・という声もありそうですが、佐々長さんには過去何回か芸能人によるテレビ放映があったもののその全てで事後注文はほんの数箱程度であったため、小規模企業として資材原料の大量保管スペースは無く、過剰在庫は不景気の中で経営危機にもつながりかねず、今回のテレビでも大量製造の準備はしなかったのは合理的判断であり、当店も事前に在庫を制限する理由がありませんでした。

そこに発生した予期せぬ大量受注。そして山村という大手瓶メーカーの追加製造難。その背景には日本の瓶市場の縮小による供給制限もありましたが、当方への多数の注文者の皆さんには状況を都度正確に報告し、善処尽くしているわけでありますが、そんな報告に対し、当店にこんなメールが入ります・・

「回答になっていませんね。御社の事情は消費者には関係ないこと。こちらは支払いが完了している以上は商品を受け取る権利があります。御社が製造の見通しが付かないのであれば、キャンセルしろとか、数年待てとか要求する前に謝罪の上、即時返金すべきだと思います。それが出来ないのであれば商売を辞められたらよろしいのでは?」

一件丁寧な指摘に見えるようですが、その前からのやりとりを含めその中身としてはクリーピーな内容のクレームに他なりませんでした。

まずは虚偽。上記クレーム客の注文は商品発送前につき当方未請求、勿論支払いは済んでおらず、よって返金はそもそも不可能。支払ったという虚偽を基に居丈高に販売者に返金と謝罪を迫る精神構造が当方は理解不能です。そして事実誤認。当方はお詫びと共に、異例の特殊事情により今回の全てのご注文分の製造には佐々長醸造ではどうして長期間、半年以上かかる可能性がある事、その上でもしキャンセルご希望の場合はお申し付けくださいとハッキリと記載したものが、この人物には当方がキャンセル強要した事となっており、しかも数年待てと当方が言ったという完全な誤認そして自分に都合のよい大曲解。更には謝罪を求め商売を辞めるべきという甚だ失礼かつ的外れな提言がグロテスクな嫌味と共に恥ずかしげもなく明示されたものです。自分に言われたらどう感じるか想像してみてください。

長くなりましたが、当方が一番気になったのは上記人物の低劣な人間性というよりは彼がいう「消費者には関係の無いこと」の部分です。具体的に聞くべく直接当該人物に私が電話して確認しましたが、やはりというか、「客に対してその態度は何だ。客がそう言っているんだから従え」といった感じで終始。

本件では長期化は完全な不可抗力ですが、当方は上記人物を含む全ての注文客の皆さんに何度もお詫びを入れてきました。注文管理の多大な手間や超過的顧客対応により新開発商品営業の時間がなくなった等の機会費用がかさみ、更に事実無根のネガティブレビューなどでおそらく全体で損失取引の可能性が大という状況。相次ぐ不見識な強要や最低限のマナーを守れない顧客からの無理な問い合わせに応じざるを得ず、当方精神的にも疲労困憊です。

上記クレイマーにそのような販売者の事情を想像する能力はありません。金払ったんだから何でも聞け(この人物はそもそも支払い済んでいませんが)。つまりモノ・サービスの提供者よりカネの提供者の方が偉い、つまりカネのほうがモノより価値がある、それがデフレ経済です。それはまさしく潤沢である消費者余剰を当然の事と勘違いしている消費者が蔓延する社会です。

ちなみにこの人物は自分も商売をやっているから教えてやるが、当方の説明が客に対して失礼だと言いました。彼のようなマイオピックな商売人は社会や産業全体を見る事ができず、自分の今の利益しか見えず、付加価値を提供できず、顧客には安値で媚びるしかなく、その結果として彼の顧客たる消費者達に対し悪い意味での誤解を与えている事に気づく事ができません。

平成から今に至る日本では販売者が本来得るべき利益マージンを犠牲に消費者は支払対価以上の便益効用を享受しており、それにより低賃金は固定化し、非婚化と少子化が加速し、この例のように日本が更に不幸になる事が全く想像つかない人達が増えました。それがデフレ社会の一面です。

またこの例はデフレ経済は低質な人間性を晒しだすという意味でも人間社会に好ましくない事を示すものでもあります。

今は物価高とかメディアが騒いでいますが、日本経済は輸入原価高を小売価格に転嫁しきれていないデフレ基調である事は2022年10月末現在も変わりありません。CPIが数パーセント上がったところで全体の粗利つまり給与の原資は減っているのです。

今ほどヴェブレンの主張が正鵠を射えている時は無いのでは?BusinessではなくIndustryが大事だと。本件の例でいえば販売店の中の1社の当社、上記人物にいわせれば当方も佐々長醸造の「客」なので、早くしろと文句言ってればいい事になりますが、勿論当方顧客意識はなく当該産業振興のための参加者ですから、佐々長醸造の課題を共通解決できるか?という事になり、実際に本件では山村以外の瓶調達先を当社で独自に発掘、佐々長さんに提案もしております。

政策金利から

まずは短期金利の話、中央銀行の今の政策金利を比較、図の出所はチャールズ・ビレロ氏。

スイスの政策金利がプラスに転じ、マイナスは日本だけ。インフレ率を引いた実質では先進国軒並みマイナス、プラスなのは中国、サウジ、メキシコ、ブラジルといった比較的元気な国。

政策金利や消費者物価(CPI)水準においてスイスと日本は比較的近いものがあります。

日本のCPIが低い理由には構造要因があり、供給面のそれには川下優勢な流通構造があり、需要面では社会保障不安による慢性的節約が固定化したこと、更に過剰な株主資本主義により賃金に回らず若年層中心に購買力が落ちている事などを私は従来から指摘しており、つまり金融政策などに大して影響を受けないという立場です。

このような構造要因が日本のCPIにのしかかる重い蓋だとすれば、スイスに乗っかかる蓋としての構造的要素はどちらかといえば外的要因、隣国に車で買い物に行ける地理構造によりスイス国内の小売業者は値段を上げるのに慎重のようです。

それに対し日本の場合は日本国内で自分達でどうにかできる部分が大きいという話です。

戦後の日本はGHQ政策もあり、戦後生まれの私達は自由、私・個の権利ばかり助長、健全な社会であれば当然それらに付随される義務感、公・集団人としての自覚に欠ける人間がいまや大半と思われ、経営者は自社の成長だけをひたすら追求した結果、過剰競争の状態をどうすることもできず今に至っています。

それが顕著に目撃できるのが量販小売店やネット(アマゾン)の清涼飲料売り場。メーカーの過当競争をいいことに割引競争を煽り、ただでさえ薄利の商品の小売価格を勝手に下げメーカー新商品のブランド構築を阻む。その結果、食品飲料製造セクターの平均給与は低位に張り付いたまま、当方も当該セクターの人達を知っていますが、結婚したくても給料安くてできないのが実態。

今年の物価高といっても、資源高・円安による原価上昇分は小売価格にまで転嫁できていない、つまり全体の粗利は減っている中では賃上げといっても無理があります。

他方、この秋、遅ればせながらも、コストプッシュながらも、飲料メーカーの卸価格の値上げが相次いでいます。これまで小売店側もそれに応じる形で店頭価格を上げました。一方、現時点で聞くところによるとその結果販売量が落ちているといいます。

ここが経営者の能力が分かれるところ。この先の数か月、販売減などに耐えきれず結局価格を引き下げ、つまり囮廉売並に戻す事に応じるメーカーがいたら、その経営者は少なくとも産業経営の器は無いといえます。伊藤園?、アサヒ?、サッポロ?、キリン?、サントリー?・・・

消費者の方には誤解なきよう、モノが安くなって久しい日本、消費者としての私達は過剰な余剰を享受している一方、労働者としての私達は逆に過少な所得に甘んじ、少子化と世代間不公平が加速しました。今は消費者としての自分達を律し、フェアな価格を支払い、労働の価値をもっと重んじるようになるべきではないでしょうか。



最近の会話

大手飲料メーカー担当者との今日の会話

少し前にカインズホームさんへの納価上げましたが回転していません(=カインズにおける小売販売量が減少しています)。ベルクさんとかへの納価は来週から値上げしますが、どうなるのか。。

販売量が減ると納価下げてくれと言われるのかな?

それもあるかもしれませんが、うち(メーカー側)が(納品数量を上げるために)納価を下げる事があるかもしれません。

そもそも水やお茶が小売店の囮廉売の恰好な素材として実質赤字販売で長期展開されてきたのが問題ですよね。

はい、私も長くやってますが、入社した時より何割も商品価格は落ちました。

長く政府に進言する立場のサントリー社長の責任は重大。雇われ社長の限界というか、産業経営のタマではない事は判明していますね。

最近の会話

大手飲料メーカー担当者との最近の会話。

「今日からカインズホームでうちのお茶の値段が上がります」

「やっと(小売)価格が上がるのね。よかったですね。先方への卸価格も上がったのかな?」

「今回上がっています。」

「値上げで販売量減ったら彼らは値下げる?」

「分かりませんね・・」

「見ものですな。じっくり観察していきましょう」

「それと、納品の都度(こちらが作業するので)1時間もかかるのは変わらないんですよね・・」

消費者物価のドライバーは何だ?

1970年~2020年までの半世紀の消費者物価指数を項目別に調べています。
下図は50年間の600強の全項目を平均年率値上がり率と値段の変動率で散布したもの。(縦軸が平均価格上昇率、横軸が変動率)

この2要素の相関関係は弱いことや項目によっては価格変化の理由が想像できるものがあること等がわかります。
例えば半世紀で最も値段が上がった項目のグループには教育関連が多く含まれていたり、逆に最も下がったのはパソコンや家電など技術の進化に伴うものであったり。

そんな中で注目に値するのが当社が属するミネラルウォーター(図中の黄丸)。
PCのように技術革新と無縁のセクター、ですがミネラルウォーターは年平均で2.76%も価格が下がっていました。(当項目がCPI指標に加わったのは2000年につき20年間の平均)2.76%は大きく見えないかもしれませんが25年で元の半値になる水準です。

さて、CPI2%の継続的達成のために金融政策では不十分である事は過去10年の日本の実績で説明がつくものの、では何が必要なのか、当方知る限り誰も正解を提示していません。

小職が提示するとしたら2点あります。一つは社会保障への不安の解消。もう一つが流通構造の改良です。前者はマクロ的解決、後者はミクロ的ですが、当方はこれら2点をを丹念かつ大胆に改良することで緩やかで健康的インフレを起こし、それは賃金上昇を伴い、結果として結婚と新生児が増えると思っています。

尚、現在進行中のコストプッシュインフレで2%達成してもGDPデフレーターがプラスにならないと無意味です(GDPデフレーターは現在マイナス、つまり輸入原価上昇分を価格に転嫁できていない状態です)。

そこでミネラルウォーターに戻りますが、値段が20年前の半値あまりにまで下がった最大の理由は飲食料品の流通構造にあると考えます。

製造セクターと小売セクターにおける企業数や事業規模の差異がパワーアンバランスの常態化をもたらした結果、小売店が完全にプライスセッターとなりました。製造者がいくら新商品を定価で売ってくれといっても小売店自身の目標に達しない商品は勝手に値段を引き下げられる。水と平和はタダという風潮が残る日本で、合法的囮廉売にミネラルウォーターは恰好の素材という事です、分かりやすく言いますと。その為、水でいえばブランディングとメガチャネルに依存しない販売経路が大事なのです。今回はここまでです。

再掲:水広場がクリスタルガイザーの販売を止めた理由

クリスタルガイザーといえば日本でお馴染みのアメリカ産ミネラルウォーター。
大塚グループ傘下の米Crystal Geyser Water Companyが製造しています。

一時期、日本で最も売れた輸入水であるクリスタルガイザーですが、その最盛期ともいえる時に水広場では販売を止めました。

理由は2つありました。

1.倫理的理由:水源地のカルフォルニア州が水道水不足に瀕していた中、商業目的で大量に採水し、外国(日本)で販売するのは善でない。

2.経済的理由:クリスタルガイザーが売れてもGDP(付加価値)が増えず経済的に無意味。製造と輸送で出すCO2等の外部性を含めばクリスタルガイザーを日本で売れば売るだけマイナスの付加価値が生じるものと思われる。

このように不当廉売ならぬ「無価値廉売」「負価値廉売」の有名輸入水は他にもありますが、クリスタルガイザーに関するエピソードで今も記憶に新しいもの一つご紹介。

・2011年2月の日本、クリスタルガイザーはいくつかの通販サイトで1本税込送料込で26円程で売られていた。

・同年3月の震災で日本全体が飲料不足となり、某健康系通販サイトが急遽クリスタルガイザーの並行輸入を試みたものの、茨城県の大手キャップ工場等が予想以上に早くリカバーした事で国内飲料大手が早期に製造再開、結果として某健康サイトはたちまちガイザーの過剰在庫を抱え、震災前より安く叩き売りする珍事に。

真っ当に人件費を払いきちんと水源管理をしていれば、工場出しで日本円のイメージとしては1本最低でも30円はかかる。そこにアメリカ国内輸送、海上運賃、通関費用、検品、保管入出荷、日本国内輸送、販売者適正粗利、消費税のコストが必然として載る。これらはコストは悪いものではなくイノベーションと無縁の、あって当たり前のもの。

翻り、コロナや戦争の混乱でどの国の原価も上がった2022年、加えて海上運賃の高騰と急激な円安で輸入コストも激増した今、日本でクリスタルガイザーが例えば1本70円程度の値段で売られていたらソレは経済的に無価値なシロモノ。ネガティブ外部性を引けばマイナス付加価値、売れば売るだけ経済を破壊する。

従って、そのシロモノを求める消費者は無知・無教養な人、あるいは自分だけよければ良いという自己中心的な人ということにもなってしまう。18年の消費者ビジネス経験の皮膚感覚では今の日本人のゆうに半分以上がそう。金持ちも金持たぬ人もみな商品の先にある製造者や流通業者の生活、そして小売大手がいかに仕入先を叩いているかなど想像する余裕がないように見えて仕方ない。

上記は以前の投稿でも述べた事ですが、その後クリスタルガイザーウォーターカンパニーが新設した工場(画像参照)運営に反対する地元の環境団体と原住民のグループが提訴、結果勝訴、同社は当工場を売却せざるを得なくなりました。

このニュースを最初に知る必要があるのは私達日本人ではないでしょうか。

画像出所:OPB.org

つけもの石が乗ってる・・・

日本の清涼飲料市場は5兆円規模、れっきとした産業、しかしその中身を見るとサステイナブルではありません。

直感に訴えると下図のイメージでしょうか。需要線は推測として一般的なもの。Ⓒの領域は消費者余剰、ⓟは生産者余剰。生産者側では低価格生産が固定化し、消費者レベルでは本来支払える金額より安く同じ効用を享受している・・・それは円安が始まる前から諸外国から来た多くの人たちが日本の飲み物の種類の豊かさ、品質の良さ、その安さに驚いている事からもわかるでしょう。

飲料に限らず多くの財・サービスに巨大な消費者余剰が生じている日本、余剰分の効用を加算した経済的指標でみれば世界トップクラスの大国です。

他方でそのツケは生産販売側に来るわけで、低賃金でも消費者としてはモノが安いから何とかやっていけるという縮小均衡。その結果、適齢期の若者達の多くが結婚したくてもできない状態が続いています。


なぜ飲料業界の供給曲線はフラットなのか?

構造要因
・流通チェーンの川下の小売業と川上生産者とのパワーアンバランス。

生産販売側の要因
・(付加価値化という意味合いの)ブランディング能力の不足。これはミネラルウォーターが良い例で、良い水質と汚染の無い採水地確保や経常的な汚染保護と水量水質の安定にかかるコストそして価値が大きい事実を伝える努力を怠り、全ての水が一緒くたにされる中、ただコスト競争に走ってしまう。特に震災特需で参入した異業者や有名輸入水の並行輸入業者が該当するが、それだと低粗利低賃金構造から脱せない。

つけもの石!?

だからグローバルウォーターでは創業以来、水の本当の価値を世の中に訴えてきました。デフレを代表する清涼飲料ですら本来的に「サステイナブル」な産業になれるよう、本当に恥ずかしいぐらいの微力ながら。

少し下がって俯瞰すれば、日本全体に何か重みが被さっていて、それが価格を押し下げているように感じませんか?

つけもの石の正体は高齢少子化に伴う将来不安と既に高すぎる現役への社会保険負担による可処分所得の低さ、違いますか? 将来不安が和らげば飲料業界もアンフェアな廉売から逃れる余地すなわち流通全体て真っ当な粗利が生まれる余地が生まれ、それが給与が上がる必要条件だと思うのです。

少子化対策の一丁目一番地は若者の給料を上げること、違いますか、岸田さん?

そのためには、くれぐれも最低賃金を上げるという安易さに逃げないでください。やっただけ零細が撤退か潰れるだけで何も解決になりませんから。根本治療が今必要なんです、違いますか?

花王、お前もか・・

ミネラルウォーターや洗濯用洗剤は消費者物価指数で見ると見事な劣等生。前者はCPI項目にカウントされ出した2000年から2020年までにほぼ5割安となり、後者は1971年からの半世紀で価格はほとんど上がっていない。

今の消費者にとって有難い話、全体ではマイナス。何故なら低粗利>低賃金>結婚できず>少子化進行>社会保障システム崩壊またはその不安による消費投資低迷>デフレスパイラルというネガティブパスを日本経済まっしぐら、より多くの将来世代が不幸になるから。

どうすれば物価が普通の国のように上がれるのか? 典型的なデフレ業界に自身をズッポシと置いて18年、毎日自問している。

8月4日日経にあったが、最近の原材料高を価格に転嫁しきれない花王。洗濯洗剤業界は3社寡占、無数の零細が占める飲食料品製造の世界とは真逆にも関わらず花王も価格を上げられないらしい。GDP下げるよりシェアを下げる方が彼らにとってはマイナスなのだ。このように企業経営者がいかに「産業経営能力」が無いか示す例は枚挙にいとまない。MBAで教えることを今の日本で実践してもGDPは増えず、最大多数の幸福を実現できない。

先進国で日本だけが物価停滞、GDPも停滞という体たらくは過大な消費者余剰と過少な生産者余剰の歪さを是正しないとどうにもならない。

食品製造のようなフラングメントセクターに限らず洗濯洗剤のような統合セクターでも値段が上がらないのは、流通の川下とのパワーアンバランス、シェア優先経営、コーポレートガバナンス改革と株主重視経営、政策失敗(若者への過大な社会保険コスト、デフレ期の消費増税)等の要因が複合的に作用した結果だと思う。

日銀の金融緩和で物価が上がるほど日本経済は教科書通りでない事はこの9年ほどで証明された。

今の日本こそ企業経営者が産業経営を目指す好機はない。

今日も何台かのトラックが商品納入と出荷で当社倉庫に来る。ドライバー達は独身。話をすれば「結婚」という言葉は高給取りやエリートのものになってしまっている。飲料製造業界全体も似たもの。

現場も知らない無能官僚や御用学者にこのまま任せていたら日本は終わる。例えば東証プライムというなら最低平均年収800万円ぐらいの要件化が当然だと思うし、イオンやセブンはじめ大手小売り業者の飲料の買いたたきや囮廉売への規制強化も必要。他にもできる事は山ほどある。

もやもやnote・・需要って?

日頃のもやもやの正体探し。

デフレには2つの定義があり、一つ目は文字通り物価が下がっていく現象、もう一つはGDPギャップがマイナスであること。総合物価指数が2%超えても日銀が緩和継続する理由は後者を理解すればわかる。

そのGDPギャップ、今の日本経済は供給に対し需要が足りないという。公式統計として内閣府と日銀が別々のGDPギャップを発表しているが、ざっとおさらいしてみる。2つのグラフの上が内閣府から、下が日銀の公式データから僕が作成したもの。


全体の推移は似ているが違う点もあってコロナショックの2020年第2四半期は内閣府は-9.4%のところ日銀は-4.2%と実に倍以上の開きがある。


それぞれ優秀な方々が精緻にまとめた統計だと信じたとしても数字が2つあっては国の経営判断に困るはずだが、もやもやする。

いずれにせよ今回の話題はそこではない。需要の意味だ。グラフのとおり今はGDPギャップがマイナス、需要不足という事で、政府が需要を創出(カネを使う)する必要性が叫ばれ、それは間違いではないと思う。他方、需要と叫ぶ人達の多くが本当に需要の意味が分かっているのか疑問に感じるところ、それは需要=カネがあること、と誤解している部分。

個人金融資産が史上初めて2千兆円を超え、民間だってカネはあるのだ。(カネの偏りは枝の話、ここでは幹の話)需要とはカネ+カネを使う意欲であり、今の民間には後者が不足しているというのが事の本質だと思われる。そしてその主たる原因は年金など将来不安であることは定量的にも正しい事が検証されている。

つまり、本当の意味で需要をつくるとは、不安を解消することに他ならない。