ウクライナ、ドイツの水、日本。

ドイツのエンジンガーの社長と久しぶりにコンタクト。ウクライナ戦争のあおりを受けて資材調達が困難になっているとの事です。特に外箱等に使う段ボールが入らないと。

僕らとの17年の歴史もあってか、同社長は日本に強くコミットしてくれています。

ゲロルシュタイナーをはじめ、世界最大のナチュラルミネラルウォーター国であるドイツ産の複数の良水が日本向け輸出を終了しました。

他方、際立ったミネラル量とミネラルバランスを誇るエンジンガー・スポルト。日本で定期購入のお客様も多く、海運費用や円安も含め弊社のコスト自体2倍近く膨れ上がっていますが、何とか供給していきたいと思います。

水広場的 経済ばなし

水広場的経済論は賃金が主役です。理由1.日本で最も不幸せなのが(消費者としての我々に対しての)労働者としての我々だから、理由2.少子化緩和に最も効果的と思われるから。

改めて現状を確認し、解決の方向性を探る。まずは黒田日銀の金融緩和でどうなったか。貨幣は資産市場に向かい円安株高となり資産家と大企業を潤したが実物経済には回らずにCPI2%は緩和で達成できず、失業率は改善したが2009年からの改善トレンドが続いただけとも言える。(失業率について:日本の慣習・労働法制度下ではそもそも中央銀行がコントロール不可、すべきでもない。FRBの真似をする前提自体が間違い)

簡略的な図にするとこんな感じです。2022年のインフレはコストプッシュで金融緩和が起こしたものではありません。エコノミストと言われる人たちはセオリーを神格化してしまい日銀を過大評価しているが、実体経済への影響度は大してない事に気付いていない。

一方で足下の急な円安、金利1%上がっても元利コスト上昇は5兆円以下、政策金利をゼロコンマ%上げて急激な円安に少々対抗するぐらいの事はしてほしいと願うところです。


そのコストプッシュインフレ、川上から川下までちゃんと見ればいかに消費者が得をしているかが分かります。輸入品はじめとする総合的な一時原価上昇が凄まじい中、メーカー、卸、小売りの各段階でコスト増加分を川下に転嫁できていない。消費者が弱い市場であればGood News、労働者が貧している今これはTerrible phenomenon。粗利が減ってはただでさえ低い賃金上げようがなくなる。

100円輸入原価で小売価格200円の商品を仮定した単純な例は図のとおり。消費者としての我々は2%の上昇で騒ぐ前に、社会全体の公平性を熟慮しなければ。輸入原価上昇は外的要因ゆえどうしようもなく、短中期解は小売段階までコスト上昇を転嫁する(不当廉売ルール見直しを第一歩とし)、消費税を下げる、できれば両方を。


長期的な最大課題は少子化。賃金増がその解決、その理由を簡単な図にすればこの順序に。大げさにいえば不安解消のトリクルダウン、賦課方式で少子化が加速していれば普通の市民は不安を覚えて当たり前だ。社会保険制度の構造を創造的に改良することが急務、それが全ての根っこなのだから。若者世代への生前贈与を自由にし、純資産と預貯金が潤沢な資産家高齢者には年金を国家に贈与してもらい(さすがに無理か?)、国債は借換時にPerp(永久国債)に転換しながら、現代国家では国債という政府債務(国民債務ではない)が自然増になるのは当たり前である事を政府が説明すること。最後の点はすぐにできる。

センターの日常から

取引先ワイン輸入業者との会話から。

「景気どう?」

「5月は最高でした。高級ワインが特に売れました」

「それは良かったね。なぜ高級ワインなんでしょうか」

「飲む需要以外に値上がりを狙った動きだと思います」

今の物価上昇が1974年狂乱物価よりひどい理由

過去50年間の消費者物価、最も上がった年は1974年で前年比23%も増加した。

半世紀後の今、直近では生鮮食品除くコアCPIで約2%、エネルギーも除いたコアコアで1%弱だという。

一見すれば2%という水準は健全経済に、23%と比べれば至ってマシに見えるが、それは間違いだ。

1974年に物価は実質的に下がっていた、つまり1974年の賃金上昇率は物価上昇を上回り「購買力」は上がっていた。

2022年、実質賃金が下がり続けた中でのマイルドだろうが価格上昇は購買力を更に下げる。それは倍増した社会保険料や以前無かった消費税で端から大きなハンデを負わされている若者たちにのしかかり、結婚は遠い憧れとなり、少子化が更に進むことは容易に想像がつく。

生産労働人口は全人口のざっと7割、つまり日本が民主主義であれば幅を利かすべきは労働経済論、そのため現在は1974年の狂乱物価より酷い経済状況であることをポリシーメーカー達は承知する必要がある。

キーワードは勿論、賃金。

当職はずっと前から賃金が最重要と言ってきた。

賃金を上げるために不当な低価格は是正すべきだし、賃金を上げるために株主還元を減らし理想的には上場企業数の過半を非上場化すべきと考える。

公的資本主義実現には金融界を敵にする為、当初は度胸のある政治家が現れたと期待したが、その後の展開は想像外の悪手、インベスト・イン・キシダと国際資本に媚びた日には言葉を失った。

金融界とも仲良くしつつというのが現実であれば、NISA等の小細工でなく、例えば日銀所有のETFを一旦政府に移してから国内全世帯にロックアップ付ながら半値で売り出すぐらいの「国民株主化」というビジョンが何故出てこないのか不思議だ

賃金を上げるためまず政府がすべき事の例;

●不当廉売の定義見直し:生活用品や清涼飲料は囮廉売が跋扈しており、当該セクターの多くの製造者賃金は低いまま。廉売の評価基準を現在の仕入商品価格だけでなく諸費用を含めた実際ベースの原価に変更する。

●上場基準改訂:国際企業のお墨付けたるプライム市場はじめ、上場基準に最低平均年収を設ける。例として600万円なら4万5千ドル、先進国の新卒レベルしか払えないような会社が上場に値するとは思えない。平均給与600万円未満の上場企業はゴマンとあるが、日本の金融庁はそんな状態で恥ずかしくないのだろうか。

賃金を上げるために政府が中期的にすべき事;

●年金・健康保険制度の改良:小川一夫「日本経済の長期停滞」でも消費・投資停滞の主因が年金への不安である事が定量的に示された通り将来不安の払しょくが全ての前提。政府財務を家計のように語るメディアや貨幣プール論は根本的に間違いであり、ワグナーの経費膨張法則の通り、日本でも他国でも国際は償還期限が来れば大体が借換えられて残高は自然に増えている事実や自国通貨を自由に発行できるというEUには無い利点をまず理解し、最も堅牢なストラクチャーを再考、提示、将来年金も問題ないと国民を安心させる事がポリシーメーカーの仕事のはず。

サントリー値上げ、その2

当方の仕入先でもある某大手飲料メーカー担当者とのある日の会話。

サントリーさん値上げだってね。果たして小売実勢価格は上がるのかな?

弊社は大手小売店に直接納入してますが、当方が値上げをしても卸先のどこかの小売店が必ず一方的に値段を下げ、それを見た競合小売店の多くが一斉に「おかしいだろう、うちへの納価を下げよ」となって結局すぐに小売価格は元に下がる、これまで何度もこの繰り返しでした。

サントリー値上げ宣言!

サントリーが値上げを発表した。

繰り返し恐縮だが全体縮小均衡に陥った日本経済の最大問題は賃金が低いことであり、賃金を上げるには何はともあれ粗利を増やすこと、粗利を増やす真っ当かつ簡単な方法は最終消費者価格を適正水準に引き上げるに尽きる。

同じ品質のものを買うに日本ほど安い国はない。諸外国なら150円相当が当たり前のものが日本では100円で良品として買える。デフレ日本の消費者は強者、売り手は弱者、その仕入先は更に弱い立場にある。過当競争で極大化したこの消費者余剰のツケは労働者としての自分が払う羽目になっている事にやっと多くの人が気づき始めた。そう、日本経済復活の第一条件、消費者保護の最大化から労働者の稼ぎの最大化にシフトする事だ。

そうなってやっと若者にとって結婚という言葉が現実味を増す。結婚したいけど金ないからできない。結婚した世帯は子供もそれなりに産まれていて、つまり若者の低賃金は少子化の原因でもある。

今回のサントリーの値上げ発表が試金石になりえるか?2019年のコカコーラの値上げの際はほぼ全く飲料価格を上昇させなかった(囮廉売がひどかったミネラルウォーターの短期間だけの値上げを除くと飲料価格は上がらなかった、添付チャートCPI抜粋参照)。

政府要人に長期間アドバイスしてきた人間がトップに立つサントリー。当初は値上げに付き合う大手スーパー達も半年待たずに値をまた下げるようでは当該セクターの賃金が上がることも絶望的だ。政府に上から助言する前に、サントリーの社長には産業経営者として自らの業界で少しはまともな仕事をしてほしいと考えるのは国民感情として当然だろう。大いに期待しています。

CPIから何が見えてくるか

中央銀行による空前のマネー供給でも頑として上がらなかった日本の物価、ここに来て輸入原価高騰の一部が小売価格にも反映されているが部分転嫁に留まり、つまり付加価値は増えていないため賃金が上がるシナリオが見えてこない。

ここ数年の水広場は日本の賃金が上がる政策とは?を自問しているが、その中で、これまで半世紀の消費者物価の変化をいろんな角度から見ている。

物価を構成する財サービス品目グループの中から本件で重要と思われる25分類に関する2020年までの50年間の毎年の対前年変化を抽出、各グループの他グループとの関連性を分析した結果、他との関連が一番低い品目グループは「(公共)医療福祉サービス」、2番目に低いのは「石油製品」だった。後者は意外だが興味深い。

流通構造と値段についてどこまで迫れるか、物価と賃金についてどこまで説得力持てるか、株主資本主義との関連にも迫れるか、まだまだ序の口。

毘沙門水


地元の皆さんと一緒に秩父の奥座敷で湧く「毘沙門水」に足を運ぶ。

秩父は言わずと知れた石灰岩の名所、毘沙門水の位置する山の名も白石山(別名:毘沙門山)という。

カルシウム豊富でマグネシウムは控えめ。ph7.8、毎日でも飲みたい美味しくて健康的な天然水。

水源管理はそれなりに大変らしい。そのおかけでしっかりと水が守られている。

震災から11年

今日で東日本大震災から11年前。改めて御悔みを申し上げると共に、今も避難生活をされている数万名の皆様に御見舞いを申し上げます。

11年前、弊社としても飲料水を現地に届けましたが、その際の反省が一つあります。細部に渡る想像力が欠けていた事です。

ドイツのエンジンガー社と協力して被災地にミネラル豊富な天然水17トンを届ける為、コンテナのトレーラーを現地にピンポイントで手配、到着したのは良いのですが、コンテナ扉の鍵に使われる鉄のコンテナシールをカットするボルトクリッパーがその場で用意されておらず、コンテナを開けるまでに手間がかかりました。無償提供だから仕方ないとは考えておらず、改めて申し訳なかったと思います。

平時なら無用な気付きが有事には非常に有用であることをその際には気づきませんでした。改めて思い返すと共に今後に生かします。

オーケー・花王からも透けるデフレの本質

物価を上げるには相対的にマネーを増やせばいい、つまりMV=PQのMを増やせばPも上がるというモデルは通用しなかった。

CPI構成品目数の26%を占める最大セグメント、食料。

そのいびつな流通構造、慣行、そこに加わった株主資本主義で、当該業界、少なくとも加工食品セクターにおける小売価格停滞のおおよその説明がつくと私は仮定しており、時間さえあれば検証に挑みたいと思っている。

加工食品セクターの中でもデフレが目出つのが飲料であり、そのひどい飲料セクターでも特にデフレエンジンとなった品目がミネラルウォーターであることが当方調査で判明。(下図参照、青がミネラルウォーター、黒が飲料、2020年を100として指数化した)

ちなみに別図のとおりデフレ経済の中でも安定的に価格上昇を続けているのが授業料(青:ミネラルウォーター、茶:大学授業料、2020年を100として指数化)。
ミネラルウォーターを生業とし子供も持つ当方家計状況の説明には丁度よい。

もうじき還暦が見える当方の生活などどうでも良いが、デフレで静かに潰れていく日本のこれからが心配でならない

消費者物価(除く生鮮品とエネルギー)が上がらなければ賃金も上がらず、カネがないため若者は結婚できず、結果少子化に歯止めかからず、低賃金固定化で横の格差が進行、そして社会保険構造による世代間不公平(縦の格差)も発生した。全体賃金停滞はGDP停滞であり、多数の貧は多数を不幸にする。

最も多数を不幸にする経済状態がデフレ。

オーケーストアVS花王の例もデフレを生んできた流通構造、慣行、株主主義が構成する氷山の一角にすぎない。オーケーはその多くの競合小売と同様、安くすることでしかモノを売れない、故にまともな水準の給与も払っていない会社。食品流通におけるセクター賃金を上げるには、小売リベート制度の廃止、不当廉売の範囲の見直しといった部分は行政の責任で何とかできるはず。そして川下に比べ統合が進まず弱小規模が多すぎる川上の食品製造セクターの横の連合を進め付加価値の分配バランスを少しでも改善すること。ついでに言うと食品流通における縦の力関係のアンバランスは売る側の人たちの尊厳も奪っている。