今の物価上昇が1974年狂乱物価よりひどい理由

過去50年間の消費者物価、最も上がった年は1974年で前年比23%も増加した。

半世紀後の今、直近では生鮮食品除くコアCPIで約2%、エネルギーも除いたコアコアで1%弱だという。

一見すれば2%という水準は健全経済に、23%と比べれば至ってマシに見えるが、それは間違いだ。

1974年に物価は実質的に下がっていた、つまり1974年の賃金上昇率は物価上昇を上回り「購買力」は上がっていた。

2022年、実質賃金が下がり続けた中でのマイルドだろうが価格上昇は購買力を更に下げる。それは倍増した社会保険料や以前無かった消費税で端から大きなハンデを負わされている若者たちにのしかかり、結婚は遠い憧れとなり、少子化が更に進むことは容易に想像がつく。

生産労働人口は全人口のざっと7割、つまり日本が民主主義であれば幅を利かすべきは労働経済論、そのため現在は1974年の狂乱物価より酷い経済状況であることをポリシーメーカー達は承知する必要がある。

キーワードは勿論、賃金。

当職はずっと前から賃金が最重要と言ってきた。

賃金を上げるために不当な低価格は是正すべきだし、賃金を上げるために株主還元を減らし理想的には上場企業数の過半を非上場化すべきと考える。

公的資本主義実現には金融界を敵にする為、当初は度胸のある政治家が現れたと期待したが、その後の展開は想像外の悪手、インベスト・イン・キシダと国際資本に媚びた日には言葉を失った。

金融界とも仲良くしつつというのが現実であれば、NISA等の小細工でなく、例えば日銀所有のETFを一旦政府に移してから国内全世帯にロックアップ付ながら半値で売り出すぐらいの「国民株主化」というビジョンが何故出てこないのか不思議だ

賃金を上げるためまず政府がすべき事の例;

●不当廉売の定義見直し:生活用品や清涼飲料は囮廉売が跋扈しており、当該セクターの多くの製造者賃金は低いまま。廉売の評価基準を現在の仕入商品価格だけでなく諸費用を含めた実際ベースの原価に変更する。

●上場基準改訂:国際企業のお墨付けたるプライム市場はじめ、上場基準に最低平均年収を設ける。例として600万円なら4万5千ドル、先進国の新卒レベルしか払えないような会社が上場に値するとは思えない。平均給与600万円未満の上場企業はゴマンとあるが、日本の金融庁はそんな状態で恥ずかしくないのだろうか。

賃金を上げるために政府が中期的にすべき事;

●年金・健康保険制度の改良:小川一夫「日本経済の長期停滞」でも消費・投資停滞の主因が年金への不安である事が定量的に示された通り将来不安の払しょくが全ての前提。政府財務を家計のように語るメディアや貨幣プール論は根本的に間違いであり、ワグナーの経費膨張法則の通り、日本でも他国でも国際は償還期限が来れば大体が借換えられて残高は自然に増えている事実や自国通貨を自由に発行できるというEUには無い利点をまず理解し、最も堅牢なストラクチャーを再考、提示、将来年金も問題ないと国民を安心させる事がポリシーメーカーの仕事のはず。

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