全国飲泉めぐり 3.中の沢温泉(福島県耶麻郡猪苗代町)

渓流の脇で飲む強酸性の湯

栃木県で2箇所の飲泉スポットを訪問した後、福島県に入った。最初は猪苗代町の中ノ沢温泉。湯治の記録は元禄時代まで遡るといわれる源泉地だ。

高速から国道115号線に入り、磐梯山を左に望み進む。黄葉中心に囲まれたパノラマ、空間が急に明るくなる。脇を流れる川岩が赤茶けている。酸性、鉄、といった泉質の想像が始まる。

中ノ沢温泉と源泉の沼尻山は6kmほど離れている。そこから湯を引いているのだ。

中の沢温泉に着き、宿泊先の西村屋さんにチェックイン、早速飲泉場でもある露天風呂に入る。渓流の脇に位置するそれは秘湯という表現がぴったりくる。

湯を少しだけ口に含む。構えてはいたけれど、強烈な酸っぱさに襲われる。
飲む時は充分に薄めなければならないだろう。pHが1.85というのだから。

その晩、宿の西村さんに話を伺った。

中ノ沢温泉では明治時代から同じ源泉の温泉水を使っているという。明治の頃の引湯は松ノ木をくりぬき6kmをつなぎあわせ中ノ沢まで引いたのだといい、当時の写真も旅館に残っていた。その源泉の泉質は酸性・含鉄-カルシウム・アルミニウム-硫酸塩・塩化物泉で、キロあたりの溶存物質が2gを超えるという。傷の殺菌から糖尿病まで、入浴と飲用のいずれかの効能があった例は多数にのぼる。この旅館で採水できるもうひとつの源泉(冷泉)は温泉水とは全く異なるもので、無色で大変飲みやすいものだった。

 温泉水の効能

この温泉水、ミネラルウォーター的にミネラルリッチという単純表現で片付けられてしまう危うさ。ミネラルウォーターとして分類されている商品の原水種類には鉱水、鉱泉水、井戸水、湧水などがあるが、温泉水はそれらと根本的に違う。pH値以外にも特定成分が桁はずれに多く含まれているなどで現代の業法上は商品化不可能なものが多い。

僕らは日頃ミネラルウォーターなり飲料水を含有ミネラル量とpHで分類するクセがある。その点は温泉成分表記も類似している。ただし、成分がどうSODや界面活性力などに関連し、更にそれらがどう健康効能に関連するのか、明らかな科学的根拠はまだ無いといっていい。その一方で飲泉と関連していると思わざるを得ない治癒例が多々ある。すなわち、僕らはそのような例とできるだけ多く接していくことである。

達沢不動滝



NHK大河ドラマ「風林火山」のテーマの背景で写っていた巨大な滝。それは達沢不動滝といい、そこは中ノ沢温泉の隣山にある。飲泉というより水広場の「名水めぐり」の素材として(ついでに)取材した。壮大なるマイナスイオン(?)を感じたのは気のせい?

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