お気に入りジャーナリスト


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水広場の堀内お気に入りの経済ジャーナリストの一人、Financial Timesのマーティン・ウルフ氏。

日本経済について中立的で正確な分析をしています。

昨年末の記事では日本の二つの課題について持論を展開。

・生産性

・政府債務

生産性は一般に指摘されているとおりと氏は指摘。

(水広場的には少々異論。生産性向上は雇用喪失と紙一重。まず欧米式の合理性だけを尺度にしてはいけない。生産性向上を議題にするならまず公的部門、公的部門では向上というより改革的インプット削減が必要と考える)。

他方、政府債務については対GDP(グロス&ネット)で多いように見えながら日銀や国民が貸し手であることなどから深刻視しておらず、その点は水広場も同感。ただし関連会社や同胞からとはいえ借金は借金。

問題解決に氏は経常黒字の拡大や民間投資消費の拡大の選択肢を挙げながら、前者は相手となる世界が承知せず、後者は企業は国内投資の余地は少なく個人消費も貯蓄率が下がっている現在、難しいと指摘。

氏は、膨大な政府債務は巨額の民間資金余剰を写しており、解決策は貯蓄に課税することだといいます。水広場的には賛成ですが二重課税の問題をクリアするための知恵が必要で、利益をあげながら支払給与総額が上がっていない企業の内部留保を対象としたり、長期定期預金を撤廃したり、様々な知恵があるのではないでしょうか。

いずれにせよ水広場的には、今の日本においては消費低迷が大問題だと考えています。

それをもたらしているのはデフレ同様、低賃金・サプライチェーン構造・シェア至上経営というのが前からの私の持論です。

低賃金対策の本丸は同一労働同一賃金、派遣制度の廃止、労働流動性の創造(労働者は転職しやすく、解雇ハードルも下げる)、株主利益最大化からステークホルダー全体の利益最大化への脱却。これらは政治マターでもあり、企業努力だけではどうしようもありません。

サプライチェーン構造、例えば食品セクターでは川上製造側が無数の小規模企業、川下小売側が少数の大企業、価格にはフェアバリューを下回る圧力がずっと居座っています。

同じく低価格が問題だった運送業界は大手の1社(佐川急便)がアマゾンと手を切ることが発端となり、今はフェアプライスが浸透しつつあり、そのようなまっとうな行動を大手食品飲料メーカーがとれないのは川下絶対の不健全なサプライチェーン構造も一因でしょう。

「デフレは貨幣現象だからお金を増やせば解消する」という理論は少なくとも日本では誤りであったことがわが国での今回の実験で証明されたといってよいでしょう。政府に影響するような賢いとされるエコノミストの方達には価格決定の仕組みを一から勉強してもらいたいものです。

シェア至上主義も大手企業の一角が是正に動かないことには変わりません。食品業界のみならず、成熟産業でありながら日本企業は利益より売上がより重要な経営目標だと思い込んでいるふしがあります。

自社だけでなく、横のつながり(業界団体)だけでもなく、川上から川下まで縦全体の付加価値創造に奮起してこそ真の経営者。簡単にいえば三方良しの精神。

低賃金と社会コスト増加に帰結するだけの赤字廉売の横行など、短絡と弥縫が延々と見られる私たちの業界ですが、それらに負けない方策を考え、日々の努力を重ね、一歩一歩進んでまいりましょう。

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