水先物

Nature誌にフレデリック・カフマンというジャーナリストが食品価格の高騰はウォール街が招いたもので、次は水が狙われるといった警告記事を書いています。水の先物がそのうち始まり、投機の対象になって価格急騰が見えているから、金融機関にそれを許してはならないといったトーンで。

随分と前、某欧州系金融機関でクレジット・デリバティブの立ち上げを担当していた頃を思い出しました。

当時は邦銀のBIS比率が8%を切る切らないの最中、その新しいツールは孔雀の羽のような見事さで簡単に銀行の実態を眩ませ、ロンドン東京間でリスクアセットのキャッチボールが横行、その構造の精緻さと動機の幼稚さの深遠なギャップに戸惑いながらも、目先の収益追求に邁進していた幼稚な自分を思い出しました。

水を投機対象にしてはならないという氏の意気込みに共感します。一方、自分の経験を交えて言うならば、同氏の警告は多少扇動的な側面があるようにも見えます。50年後、人口爆発がまだ続き、地球の水循環が弱体化するようならば、食品と同質のコモディティとして水が捉えられるのかもしれません。また彼が言っているものの中には天候デリバティブや自然災害に対する保険の領域で説明されるものもあり、また、デリバティブは決済を伴うものの記事では水の決済実務には触れられていないようでした。

http://www.nature.com/nature/journal/v490/n7421/full/490469a.html

水のロジスティクスは簡単ではありません。僕たちが彼の主張に付添えるところがあれば、それは実務面でしょう。

ところで、この記事が目に付いたのは著者の姓名が以前の同僚と同じだったから。あれっと思って反応したら、別人。

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