周防大島、メッシュ自家水道

周防大島では水道が復旧したとのこと、何も手伝えなかった者としては当事者の皆様にまずはお疲れ様でございましたと遠方より感謝いたします。

島嶼部の水道インフラの脆弱性が新たに露呈した一方、インフラ老朽化はご存じのとおり全国的な課題。

改めて日本の水道の課題と将来を考えてみる。

まず、現在まで日本の水道は硬直的な法規制のもとで運営されてきたという事実の認識。

例えば塩素消毒。マッカーサー率いるGHQが不衛生とみなした日本に強要した急速ろ過つまり大量塩素消毒は、その後日本の環境が改善されても、また有機物と反応して発ガン性物質を生成するなど塩素の危険性が判明しても、いまだ法律により義務付けられている。

水道の運営実体に目を移しても、組合そして硬直的な組織で経営は非効率。

特殊な会計制度によりそれぞれの事業体の真の経営状況は不透明。

総括すれば以前も書いた通り日本の水道は全体として巨額債務超過の状態である。

採算がとれない、老朽化耐震化対策が急務、でも需要は下がる一方の現状。

そんな中で一部の国会議員は内外のレントシーカーの利益最大化のために動く。

部分的長所もたくさんある一方、ざっと俯瞰した今日の日本の水道は上記のとおり。

そこで改めて水広場的提案を3点挙げたい。

まず何はともあれ広域連携。

具体的には各水道事業体は最低でも5万人市場の規模とし、その中で民間からすれば当たり前の水準の組織効率化を図る。

また同時に、超過品質(オーバースペック)から脱却する。

日本の水道事業は前述のとおり全体として財務的危機であるにも関わらず十分すぎるともいえる浄水処理を施し、中にはペットボトルにつめミネラルウォーターと同等ないしもっとおいしいとして喧伝されるものもある。

蛇口をひねるのが水道、エコなのが水道であり、ミネラルウォーターは用途目的が異なる別ものであり、更に水道とは浄水場でミネラルウォーターと同等のおいしさにしても家庭まで運ぶ水道管を新しくしなければ意味がない全体装置である。

水道水の大半はトイレと風呂場で流される。

その水にミネラルウォーターと同じ効用を求めるのか、あるいはコストと効用のバランスをとるのか。

巨額債務をかかえ今後の採算もおぼつかない最重要課題からすれば明らかである。

安くて高品質なのは良いことだが、その低価格水準では維持できない高品質を前提に制度設計するのは間違っている。

価格と品質は比例するのが普遍原理であり、普遍原則に反してきたオーバースペックの自然な帰結として現在の債務超過がある。

自然を相手にした巨大装置事業である水道はIT業界のようにイノベーションで劇的にコストが下がる世界ではない、つまり水道水の高品質の裏には高コストがあることを利用者一人ひとりが知る必要がある。

また今回の水道法改正の問題としては前述の塩素消毒義務化に何らメスが入っていないことが挙げられる。

菌類の含有が無いことをもって安全または上質というなら日本の水道は上質だが、本来の自然環境における水質という点では塩素を多用する日本の水道水は欧州より安全でないともいえる。

原水の質やタイプによっては塩素を使わず生物浄化で十分な水道も多数ある。塩素消毒を義務付けなければコストも多少は下がる。

他方、改正水道法のメリットとしては広域連携において都道府県の首長がイニシャティブを取れることであり、実際は知事の能力次第ではあるが制度として前進した。

一市民としては、広域連携を主導できるリーダー、オーバースペックであることや本当の安全とは何なのかを真摯に説き導くリーダーの出現を期待している。

ちなみに民営化は枝葉の話であり水道における重要課題への必要及び十分条件としての策たりえない。上場企業が入ればその資本コストの分、利用者に不利をもたらすことだけは明瞭である。

提案の3点目は別角度からの発想。

水広場は従前から人の住む場所を水ポテンシャルにより細かく網の目状に区画化し、各区画(メッシュ)に最適な自然水を活用する取り組みが将来の姿のひとつだと考えてきた。

いってみればメッシュ自家水道。各区画ごとに雨水及び/ないし地下水の簡易浄水システムを備え、既存の上水道/下水道を補完ないし切り替える。

中本先生から学んだとおり飲み水の塩素消毒など本来不要であり、また小堀先生から学んだとおり雨水にもポテンシャルがある。

当社が自家天然水wellverdeプロジェクトで目指したのは地下水の近隣共同利用によるメッシュ自家水道であった。

いずれの場合も下水道は公共インフラに頼る必要があるけれど、上水道を自宅までひくかの決定権を個人が持てるようにする。

前提としては水道インフラ運営コストを維持可能なものとするため、高品質体制を改め、場所場合によっては住民自治運用を認める。

もちろん広域連携をまずは追及しての話である。

これからの水道は様々なアイデアを排除しない知恵のインフラ整備も必要ではないか。

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