全国飲泉めぐり 1.鶏頂山鉄鉱水(栃木県塩谷郡)

厳選された国内飲泉スポット:東北・北関東編

良い水を紹介する使命ゆえ、できる限り自分自身で水源に触れることが僕らの基本ポリシーだ。今回は水広場会員の皆様の中から当サイトでの販売希望として預かった飲泉スポットを中心に、東北・北関東地方から厳選された計10箇所を辿るツアーを敢行した。

今回は珍しく単独出張でなく、水広場責任者である林君と一緒の水源訪問である。訪問した源泉を一つずつ順番に書き留めたい。

飲泉について補足

浸かるのが主目的の日本に対しヨーロッパでは温泉といえば飲む健康法がより一般的だ。各スパ(テルメ)リゾートの鉱泉が持つ効能を飲んで活かす習慣が普及し、それらをボトリングした多くのミネラルウォーターも薬効が期待されている。有名なところではチェコのカルロヴィ・バリなどがある。街中の至る場所から温泉が噴出し、無数の飲泉所から自分の疾患にあった鉱泉(ほとんどが酸っぱく飲みづらい)をそのまま飲む。僕が現地を2005年に訪ねた時は世界中(特に中国)からの飲泉客が溢れていた。

実は日本でも明治の頃は多くの温泉水が薬水(薬湯)として販売されていたらしい。これら特徴ある天然薬効成分を持つ原水は万人の安全を想定する現在の日本の保健行政の枠に必ずしもあてはまるものではなくなり(?)、現在の行政の立場からすれば飲用を禁ずることはあっても薦めることは無いことは容易に理解できる。

そこで僕らとしては、古くからの膨大な母集団により効能の事実を確認した上で間違いないと思われる源泉を見極め、万人でなくそれらを真に必要とされる方々へ正確な事実を伝え何らかの橋渡しになれればと思っている。

1.鶏頂山鉄鉱水(栃木県塩谷郡) 傷と生活習慣病に

管理人の大塚さんと水広場責任者の林君(鶏頂山鉄鉱水販売所前にて)

明治27年に発見された薬水

今回のツアーの最初の目的地が鶏頂山鉄鉱水(けいちょうざんてっこうすい)の源泉。鬼怒川温泉の奥に連なる川治温泉から望む鶏頂山の麓で明治27年に発見された源泉からはpH2.5という酸度が強くて鉄分豊富な地下水が採れる。販売所で3代目の大塚さんに伺った話だと、当時は東京大学の薬学の教授が訪れ(下写真参照)、特徴豊かなこの水の効用を研究したという。

左が発見者の大塚氏。右に東京大学教授陣。

傷と血糖値

地元では切り傷の治療によく使用される水であるという。強い酸性を持ち含有物は鉄と硫酸に代表される濃厚な療養泉であるが、何らかの強い殺菌力が働いていることは間違いないようだ。

血糖値が下がったという多数の報告もある。その多くが毎日この水を飲用(コップに1,2杯)されている方々からの声だという。その他、貧血、慢性消化器系疾患、便秘などに効果があったという多数の実例が揃っていた。

実際に飲んでみると酸っぱく苦く渋い。美味しいといえるものではないが、朝晩1杯程度であればいける領域だ。

薬水

前述のとおり以前はその薬効から薬水として販売されていたという。当時を記録した各種資料が現存している。(下の写真は内務省による検査証原本より)



現在は入山禁止

以前はこの源泉での採水を目的にポリタンクを持った長い行列ができた。巨岩が並ぶ危険な地形構造のためその後入山は禁止され、現在は大塚さんによる限られた採水のみとなっており、それも体力を伴うので毎日というわけではない。この水を取り寄せる皆さんの願いを知っているから採水を続けるという大塚さん。非常に貴重な水であることは間違いない。

採水客で溢れた当時(上)。下は現在の源泉風景。

成分特徴

1.pH2.5の酸性。
2.鉄分:160mg/L。
3.硫酸(SO4):1133mg/L。 欧州的にはサルフェート。利尿効果などが見込まれる。
4.メタケイ酸(H2SiO3):182mg/L。記号からはシリカ(2酸化ケイ素,SiO2)に水が化合されているものとなるが、浸かれば肌の保湿効果があるという。英米研究機関のヒトの実験では飲むシリカは骨密度強化の効果があったという。

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