外圧による水道民営化の脅威に隠れる本当の問題

麻生副大臣の訪米で日本の水道民営化にアメリカが圧力をかけるとかかけないとか報道されています。

日本の上水道の本当の脅威は民営化などの「所有/経営 構造」ではなく、先細りの需要に対して維持運営コストが高いことにあります。

水道事業が巨大装置産業である以上、運営コストに占める資本費用の比率は高く、また今後は老朽化したそれらの多くの更新に新たな資本投入が欠かせません。老朽化の更新、耐震化など、必要な設備投資を実施すれば水道事業単体で黒字になる事業体は限られるでしょう。

そして、水道法で塩素消毒が義務付けられているため、緩速ろ過(生物浄化)など塩素消毒以外のローコストの運用もできません。

欧州などと違い、日本の水はもともとオーバースペックなのです。

先進ろ過技術を駆使し「ミネラルウォーターに負けないおいしさ」を喧伝する大都市圏などの水道運営に反対しませんが、他方、本質を見る視線からは、不自然さを感じることも事実です。

例えば首都圏んの水道水の原水は遠方(遡れば群馬県北部)から河川をつなぎつなぎ流れる流域で大量に供給され、途中で様々な物質を混入し首都圏に流れ下った河川水を浄化したものを僕らは飲んでいます。

それら河川水そのものがミネラルウォーターに負けないおいしさであったなら、この不自然さは生じません。

原材料がおいしくないのに製品のおいしさがPRされる不自然さ。

汚い水、安全でない水、不味い水、が高度ろ過技術によりおいしくなるのは素晴らしいことです。ただし、21世紀も公害に悩む中国やバングラデシュなどの環境水準の国々においては。

技術立国としての誇らしい日本が見える一方で、生活者としては、そろそろ環境との共存という本来の姿に立ち戻りたい。少なくともその方向で進んでいきたいと僕は思います。

水道水の過半はトイレと風呂、つまり汚物と一緒に流されることになります。飲んだり調理に使われるのは使用水道のほんの一部。

汚物を流すのに使われるのは、「ミネラルウォーターに負けない美味しい水」。

移民を受け入れたり出生率が短期劇的に改善しない限り、事業としての水道の売り上げは逓減していきます。コストは前述のとおり減りません。

ミネラルウォーターを売りたいから水道水の課題を指摘しているわけのではありません。僕だって毎日水道水を飲んでいます。

維持可能な水道のためには、先進技術という部分最適にこだわってミネラルウォーターに負けない美味しさを目指すというより、オーバースペックなものがオーバースペックに見える単純な視座が求められます。

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