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海外水源めぐり エルセンハム (イングランド)

とんでもない日にUKに着陸。


グラスゴー・セントラル駅構内 


2月2日午後の到着予定でヒースローに向け快調に飛行中のBA008便。スカンジナビアを過ぎたあたりで機長のアナウンス、「定刻通りの到着予定ですが、ヒースロー上空の天候が悪いため、○△Xウィック空港に着陸します」。えっ、○△Xウィック?よく聞き取れなかったけれど「何とかウィック」という空港を今まで聞いたことがない。後に続いた日本語のアナウンスでそれは「プレストウィック空港」、スコットランドはグラスゴーの東にある空港とわかった。


そこは明らかにイギリス北部、目的のロンドンまでまだ700キロぐらいの場所。ロンドンへの連絡便について聞いても分からずじまいで、プレストウィック空港で確認するしかないという。さてこれはベオグラード以来のハプニングだ、とワクワクしながらも、翌朝9時半にロンドンのホテルでエルセンハムの会長と会えるか気掛かりになった。


バージン・トレイン

グラスゴー・プレストウィック空港に夕方到着。初めてスコットランドからイギリスに入国する。空港スタッフによればイングランドとウェールズは20数年ぶりという大雪で全ての交通網が混乱している。


当日のヒースロー行きは全てキャンセルとなり、ブリティッシュ・エアウェイズは空港近郊のホテルに我々乗客を宿泊させ翌日ヒースローに飛ぶという。それでは確実に9時半を過ぎる。大雪と遠距離でバスも当然ダメ。電車は無いのかと聞くとグラスゴーからオーバーナイトでロンドン行きがあるかもということ、ホテルに向かう列を飛び出して空港隣接の駅からグラスゴー行きローカル線に乗り込みガタガタと小1時間ほどでグラスゴー中央駅に到着。丁度6時40分発ロンドン行きを見つけるもdelayと横に出ている。


とりあえずバージン・トレインの切符を買って待ち、7時すぎに出発、普段は5時間というところ雪で6時間をかけ白銀のロンドンに着き、積雪の中タクシーで午前2時にホテルに到着する。よし、明日はスケジュール通りいける。


それにしてもあのバージンが鉄道事業も行っていることは知らなかった。静かで快適だったイギリス縦断の旅でした。ハプニングに感謝する。


水源訪問
翌朝、ホテルでエルセンハム創業者会長のマイケル・ジョンストンに会う。バルセロナ以来、約1年ぶりの再会。彼の車で、ロンドンから北の方向、エセックスとの境にあるハーツのエルセンハムの水源・ボトリング工場に向かう。雪は止んで快晴となったが、路上のコンディションは最悪で、たっぷり2時間あまりをかけて到着。



エルセンハム
2005年に世界に紹介されて以来、格式高いプレミアムウォーターとして、エルセンハムは ロンドン・メイフェアのクラリッジ(高級ホテル)、パリのコレット(ファッションブティック)、スペインのエル・ブジ(高級レストラン)、プライベート C(会員制チャーターヨットクラブ)をはじめ、世界中のラグジュアリー・シーンで提供されており、日本でもグランドハイアット東京が取り扱っている。


希少な地下水源から少量採水される原水はミネラルバランスに優れ、類まれなその天然の恵みを損なうことなく表象する形を創るという願いが創り出したボトルデザインは高級パフューム瓶のメーカーとあまたの曲折の末に到達したものだという。そうして完成したエルセンハムは、最高を求める世界のプロフェッショナル達を捉えている。


今回はその水源への初めての訪問だ。


ちなみにこのミネラルウォーターを日本ではカタカナ表記でエルセンハムと呼称しているが、(エにイントネーションを置いて)エルセナムと発音するのが現地アクセントに近い。


偶然から見つかった地下400mの白亜地層
高級マスタードとジャムの製造工場を持っていたジョンストン、工場の水道料金が高すぎることに気づき水道管からの漏れではないかと調査したところ、とある古びた井戸跡に気づく。何かのひらめきに動かされたジョンストン、敷地内で掘削を始めたところ、良質な白亜質地層を抜けた地下400mの地点に水脈を発見した。白亜質層は幅約100m程で、ちょうど工場の真下を通っていた。ジョンストンはそこにボトリング工場を建てることを決意する。


井戸が発見された旧工場設備の一部が記念に残されている。


ハンドメイド

透明度を意識したというボトリング工場。前日の積雪に囲まれ、ぴりっとした冷気に包まれた最新設備が建っている。はじめから大量生産を想定していないボトリング設備は驚くほどコンパクト(衛生管理の理由もある)で、3人の熟練工が寡黙に作業に励んでいる。
真下の水源から直接採水(bottled at source)し、丁寧にボトリングがなされ、1本1本人間の手で磨かれた完成品が箱に入っていく。ミネラルウォーターのボトリング工場というより、テレビで見たランボルギーニの工房といった印象を受ける。


倉庫にはスペインとチェコ向けの完成品がパレット積みされている。スペインは僕らの仲間の商社向けと分かったがチェコにも輸出しているとは驚いた。やはりというか、ロシア向けの最初のオーダーの準備も進行中であるという。


オールドプレニュアシップ??

今回の訪問では水源のストーリーと最新設備が整った工場、そしてマニュアルメイドという作り手の心意気のようなものを十分に観察することができた。これらは全てマイケルの発想と行動からゼロから生み出されたものだ。失礼ながら中高年のどちらかというと高年に属する氏、今でも新たな起業計画を持っているが、そんなところを全く嫌味に感じさせないのは、努力と経験に基づく洗練と気品を身に着けているからであろうか。そこにはアントレプレニュアならぬオールドプレニュアシップがあり、中年起業家(ミドルプレニュア?)を名乗る当方には非常に参考になり、起業経験者同士の話は車中で尽きないのであった。


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