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1 水ビジネス特集――水ビジネス、連携で市場創造、官民で「和製メジャー」。
2012/07/30 日経産業新聞21ページ 1775字

多様な技術生かし、育成
 日本企業の水関連の優れた技術を国内外で生かす商機が広がってきた。世界の水ビジネス市場は2025年に86兆円超と、07年の2倍以上に膨らむ見込み。施設の建設から管理まで手掛ける欧州などの水メジャー追撃へ、日本の「官民」や「民民」の連携が加速している。水関連の技術の需要は節水や排水リサイクルなど多様化も進む。市場拡大の波に乗れるか、国際的な視野での戦略が大事になる。
 今春、水ビジネスの関係企業45社で構成する民間団体「海外水循環システム協議会」(GWRA)が都内で華々しく設立式典を開いた。従来の有限責任事業組合から一般社団法人に格上げ。これまでは法人格を持たないため、海外実証プロジェクトなどを直接受託することができなかったが、今後は可能になる。視線の先にあるのは、日本の技術などを連携させた、和製・水ビジネスの海外輸出だ。
 式典後に開かれた設立記念パーティーには、森喜朗元首相ら与野党の有力政治家が参加。「和製水メジャーを世界に」と気勢を上げ、官民一体で推進する姿勢をアピールしてみせた。
 業界団体の法人化に呼応するような形で、春以降は日本企業の海外進出が加速した。豊田通商と三菱レイヨンは4月、中国の水処理会社に共同で出資すると発表。中国の排水処理事業に参入した。伊藤忠商事も5月、英国の水道会社の株式を取得した。
 日立製作所が全額出資する日立プラントテクノロジーは6月、中国の上水道運営に参入すると発表した。四川省の国有の上水道運営会社を現地企業2社と共同で買収。日立プラントの出資比率は10%で、出資金額は約5580万円となった。
 共通するのは、水道の運営・管理のノウハウを蓄積しようとする狙いだ。経済産業省によれば、世界の水ビジネス市場のうち、運営・管理サービスが占める割合は2007年で5割超にのぼる。日本では自治体が担っている分野だ。「日本企業は優れた技術を持ちながらも、運営・管理面での実績が少ない。それが海外展開の課題になっている」(同協議会)。海外の水道会社への出資による新たな連携は、ノウハウを得る近道となる。
 一方、日本国内では自治体と民間企業との連携が活発になってきた。広島県は9月に、県内の水道施設の運営・管理を担う株式会社を設立する予定。新会社への県側の出資比率は35%にとどまり、企業側が65%を出資する。共同出資者は荏原、三菱商事、日揮が出資する水道事業大手の水ing(スイング、東京・大田)に決まった。
 自治体が設立する水道事業会社は過去にも例があるが、民間が過半を出資する新たな取り組みとなる。民間企業の経営ノウハウを取り入れて水道事業の改革を進め、将来は海外での事業展開も視野に入れる。
 松山市では世界最大の水道事業会社、仏ヴェオリア・ウォーターが4月から上水道の運転と管理を始めた。ジャン=ミシェル・エルウィン最高経営責任者(CEO)は「日本での事業展開における重要なマイルストーン(一里塚)になった」と指摘。日本の水道事業は民間企業にとって参入障壁が高いが、エルウィン氏は「日本で変化が起きつつあることの証明になった」と受け止める。
 経済産業省によると、世界の水ビジネスの市場規模は2025年に86兆5000億円になる見通し。100兆円を超えるとの試算もある。上下水道から海水淡水化、工業用水・下水、再利用まで幅広い分野があり、多様なビジネスチャンスが広がる。水処理膜に強い日本にとっては海水淡水化は特に事業拡大が見込める。
 世界の水ビジネスでは仏ヴェオリアと仏スエズ・エンバイロメント、英テムズ・ウォーターの欧州水メジャーが水道市場の約8割のシェアを握るとされ、圧倒的な強さを誇る。シンガポールは国を挙げて水ビジネスを育成。韓国は李明博(イ・ミョンバク)政権のもとで産官学連携で水ビジネスの振興に取り組む。韓国企業の水処理膜の技術は日々向上し「日本企業に迫る勢い」(業界関係者)との声も聞かれる。
 水ビジネスの育成へ、そろり動き出した日本。世界の舞台で戦う「和製水メジャー」が大きく育つ日は来るのか。産官学、業界横断の連携による相乗効果で、市場を創造していくことが重要だ。(弟子丸幸子)
【図・写真】民間団体「海外水循環システム協議会」は、水ビジネスの輸出に挑む(都内のイベント)
2 水ビジネス特集――節水・環境、関心一段と、ミネラル水、エコ容器や森林整備。
2012/07/30 日経産業新聞25ページ 1284字

 安全・安心、エコ(環境)対応など、消費者が「水」で重視する点は多様化している。ミネラル水を手掛けるメーカーは容器などの省資源化のほか、水源の保全まで考慮するようになってきた。家庭用の浄水器では安全性を重視したうえで利便性なども競う。トイレなど住設機器では節水機能がさらに進化している。
 清涼飲料業界では環境負荷軽減の取り組みが活発になっており、ミネラルウオーターを中心に水源の保全活動など対策も多彩だ。商品に関する省資源化の動きも、容器の軽量化にとどまらず、ラベルなどで活発化している。消費者の環境・安全などへの意識が高まったことで、関連の対策はミネラルウオーターを選ぶ際の決め手にもなりつつあり、企業もアピールに躍起になっている。
 飲料大手が開発に力を入れるのは、容器以外の軽量化だ。ミネラルウオーター最大手のサントリー食品インターナショナルは5月に「天然水」で16マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルと業界最薄のラベルを導入。キリンビバレッジも2リットル容器を対象に、巻き付ける方法などを改良することで従来に比べて4割薄くしたラベルを4月から順次採用している。
 ポリエチレンテレフタレート(PET)以外の原料を使うなど省資源化の動きも出てきた。サントリーは容器につかうPETを再利用する仕組みを構築。キリンビバレッジは植物由来の原料を使うほか、コカ・コーラグループも炭酸飲料「コカ・コーラ」の容器を植物由来に切り替えることを検討している。
 飲料大手が環境対応への取り組みを真剣に考えるようになったのは、コカ・コーラグループが2009年に発売したミネラルウオーター「い・ろ・は・す」だ。国内最軽量の12グラムにし、環境への配慮を前面に打ち出した広告を展開した結果、500ミリリットルでシェア首位を一気に奪取。これまで企業の社会的責任(CSR)の一環だった環境対策が、販売にも影響を与えるようになったことを裏付けた。
 各社はその後、容器自体の厚みを削って軽さを追求してきたが、既に強度とのバランスが限界を迎えつつある。軽量化では他社との差異化も打ち出しにくくなったこともあり、「ポスト軽量化」に向けた新たな施策へと踏み出した。
 原料である水を恒久的に使えるようにするため、周囲の水源を守る活動も活発化する。
 コカ・コーラグループは国内27工場で使う水と同量の水を自然に戻す取り組みを始めた。実現に向けて、工場で使用する水の水源域を調査するほか、札幌市では植林活動にも着手。同時に水の使用量も最新技術の導入などで減らすことにも乗り出している。サントリーも東京大学と連携し、森林の整備や研究を開始。既に全国で余分な木の間伐などの森林整備を進めている。
 ミネラルウオーターは東日本大震災後、原発事故の影響もあって水の安全性に敏感になった消費者から関心が高まり、市場での重要性が増している。企業もこうした動きをにらみ、商品選びに影響する環境配慮の姿勢を、より強くアピールする必要がありそうだ。
【図・写真】サントリーは水源を守るため、森林整備にも力を入れる(鳥取県内)
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